横山 剛[作業療法学専攻]
先日の授業の中で「思い込み」ということについての話題が学生から出てきました。認知行動療法の一部分を学ぶために用意された演習の中でした。どれだけ私たちは思い込みに縛られているのかということを探ってみる課題です。「勉強は難しい」とか「あの人は私を嫌っている」などの話題が提供されました。後になってみれば「思い込み」だと分かることがしばしばですが、ここで問題としていたことは、誰かや何かによってではなく、自分自身の思い込みによって自分自身を縛っている(制限している)ということです。まだ何も取り組んでいない時に、何もはっきりしていない時に、先回りしてあれこれ理由をつけて自分自身を縛っているというようなことが理解できました。少し話題が変わります。日本から飛行機で最短でアメリカへ向かうとき、どの方位に飛ぶと良いでしょうか、の問いに地図を見ていた人が「真東」と答えました。これは、日本を中心にしたメルカトル図法の地図を見て解答すれば当然このようになるでしょう。けれども3次元で存在する地球を2次元の地図に表しているのだから、方位や距離までもが本来のものと地図では違っていることを理解すると正解に近づきます。地図を見て答えたのだから正解かといえば、そうではないことがあることに気づいていなければ、地図を見ての思い込みということになりそうですね。 以上のような思い込みを手放していくためには、自分自身の思いや考え方の特徴に気づく必要があります。他人の思いや考えを受け取ってみなければ、自分自身については十分には分からないのです。相手が「初対面の人だから・・・」とか「苦手な人だから・・・」、「私は話すことが苦手なので・・・」と言われるかもしれませんが、そもそもそれが自分自身に対しての「思い込み」かもしれないので、これらを理由に「やらない」という選択をしないというチャレンジが大切です。青年期にいる学生の皆さんは、さまざまなチャレンジをする機会があり、そのチャレンジの中で新しい自分自身に出会い、発見していくのだと信じています。このチャレンジをぜひ続けていきましょう。
教員リレーコラム