髙田 政夫[作業療法学専攻]
脳性麻痺で作家である朋友、中村勝雄氏が作業療法学専攻の授業に参加してくださるとの吉報を受け、これを進めてきた。しかし、残念ながら、今回は彼と意見交換する中で中止とした。新型コロナ禍のためである。 もともとこの企画は障害当事者の生の声を聴き、そこから作業療法士として基礎となる障害者と共に歩む『協働』の精神を学生に持ってほしいためであった。障害当事者の語りから学ぶものは計り知れないほど、障害者への理解を深めるとの期待からである。これに加え作家である中村氏の講演は作業療法士になろうとする若者たちを魅了し引き付けるものがあった。 彼は、語るからには自分の障害をしっかり感覚で覚えてほしいと望んだ。脳性麻痺という障害の筋緊張の具合はどうなのか、姿勢筋緊張はどれ程自分を縛って離さないものなのか、この身体に触って知ってほしいと云うのである。このことを今回、新型コロナ禍でどのように実施することが出来るか、感染防止の準備を重ねてきた。フェイスシールドを購入し、介護用感染防止手袋も用意した。 臨床実習における実体験ほど、学生にとって学べるものはない。共に戦う朋友を得て、臨床実習を終えた学生は顔つきまでが変わり成長の証を示してくれる。しかし、実習施設では新型コロナ禍での臨床実習の実施は初めての経験であり模索が続いている。入院入所者は高齢障害者であり持病を抱えている方は多い。このような状況下でも臨床実習を実施するために外部の全く関係のない、ひょっとすると感染しているかもしれない実習生を受け入れる施設にはそれなりの覚悟が必要であり、大学も実習生も一層身が引き締まる思いがする。 学内では、遠隔授業から感染予防を実施しての対面授業へと状況は変わった。生活の中にコロナ感染予防処置をしながらの対面授業も試みてきた。しかし、ここの所、日に日に感染者の増加が見られ、県をまたいでの移動制限をせざるを得ない状況となってきた。 中村勝雄氏の講演は本来の目的が達成できないかもしれない。お会いするだけ、語りを聴くのみで終わらざるを得ない。触れ合うことが出来ないならばまたの機会にしよう。県をまたいでの移動が必要であることから今回は見送ることとなった。共に障害と戦った朋友と電話で話し合った結果である。 感染対策を生活の中に取り入れ予防しながら学ぶことが求められている。心の緊張を何処かで求められるストレスは、どこかで発散するかゆるめないと続かない。そんな生活が今求められている。そんな学習実習風景が今求められている。いつもと違う朋友に会えない夏が来る。 コヒマワリ(小向日葵)透明水彩
教員リレーコラム