加藤 真夕美[作業療法学専攻]
前回当コラムを担当したのが3月の半ば。当時は緊急事態宣言の発出前でしたが、小中高校が一斉休業となり、紙という紙が商品棚から消え、既に世の中は大混乱の真っただ中でした。4ヶ月が経ち、学生が校内に戻り、施設での臨床実習も多くが再開されるようになってきました。本当にありがたいことです。3密対策などで「今まで」とは異なる生活様式が展開されてきましたが少しずつ慣れ、つかの間の平穏さを取り戻しつつあるように感じていました。ただ、最近関東方面を中心にまたまた雲行きが怪しく…。まだまだ緊張状態が続きます。早く有効なワクチンが開発され皆に行き渡るようにと、祈るばかりです。それまではとても旅行に行く気にもなれません…。 さて、我が家ではコロナ禍を契機に、懐かしい習慣が再開しました。なんと夜の読み聞かせです。小学校が一斉休業となり1ヶ月ほど経ったある日、当時小4だった息子が「眠れない。僕、死んじゃうのかなあ」と不安を訴えました。いやいや、長くても布団に入って1時間もすればすやすや寝ているし、夜中は起きないし、大丈夫よと思ったのですが、息子なりに不安があった様子。考えてみれば、何日も外にまともに出られず、狭い家の中でじっと座ってゲームかテレビか宿題プリントでお留守番の日々。隣の児童館から学童の子たちが外遊びする声に引き寄せられ、1日2回、外遊びするのが唯一の楽しみでした。それも雨が降ったらなし。成長盛りの子供には運動不足が重なり、友達との触れ合いも限られ、大人が感じるよりもずっと、極限のストレス状態だったのでしょうね。「寝るとき、本読んで」と自分から言い出しました。主にリクエストされるのは「ざんねんないきもの事典」シリーズ。今泉忠明氏監修、高橋書店発刊の当シリーズは〝こどもの本”総選挙で毎年上位を埋め尽くすほど、小学生に大人気のようです。現在5種類が発刊されていて、大人が読んでもおもしろい!あまりのおもしろさに、眠気を忘れて話が飛躍することもあって、入眠儀式には逆効果なんじゃないと思うこともあるのですが、気持ちが落ち着くようです。年度をまたぎ、小5になった今でも続いています。いつまで続くのかな、もうそろそろそっぽを向かれる年になるのかなとどきどきしながら、つかの間の懐かしい時間をまた味わわせてもらえているこの時代に、感謝もしています。 世の中がどんどん変化していきますが、ここに戻ってこれば安心できる、自分らしさを取り戻せる、そんな場所やお気に入りの作業は手放さずにいたいなと、しみじみ考えるこの頃です。そして読み聞かせをしながら、自分の声を子守歌に寝落ちする日々。
教員リレーコラム