石川 清[学長]
国家試験まで残すところあと僅かとなりました。受験生の皆さんは最後の追い込みに入って頑張っていることと思います。教員の皆さんには、受験生の成績が少しでも良くなることを願って、ペア学習を取り入れ、ペアを変更するなど色々な手立てを考えて指導をしていただいています。ご苦労様です。 国家試験の対策についてはあるプロのコーチがこんな話をしていました。ある国家試験予備校の先生に、最近、どういう学生が国家試験に合格する傾向が強いかを聞いたところ、「顔が広い学生」が合格する傾向が強いということです。「顔が広い学生」というのは、特に、特定の人と親しいということではなく、広く浅く、人と付き合っている学生、つまり、学生同士や先生などと幅広く関係を築いている学生ということだそうです。人と人とのつながりの度合い、つながりが強いか弱いか、と言うことが国家試験の合否に影響するということです。「顔が広い学生」とは、人とのつながりが顔見知り程度の「弱いつながり」と言うことができ、付き合いのある誰とでも気軽な相談や最新情報を入手できる多様な付き合いを持っている学生と言えます。国家試験対策で人とのつながりが全くないのは問題外ですが、「強いつながり」を良しとしないのは、「強いつながり」は信頼や安心感は満たされますが、一方で、情報や知識が偏る傾向を生むことになる可能性があると言えます。 残り少ない期間ですが、受験生の皆さんには「弱いつながり」を通して、一人でも多くの学生や先生からさまざまな知識や情報を効率的に入手して国家試験合格を目指していただきたいと思います。ペア学習のペアだけでなく全ての受験生と幅広く学習するのも良いかもしれません。 ちなみに、このような「弱いつながり」が組織のイノベーションを生むことを示唆した興味深い研究があります。アメリカのある研究所で働く研究員を対象にした研究で、各研究員が他の研究員とどのくらいのつながりがあるかによって、その研究員が新しい革新的なアイデアを生み出したかどうかを調べたものです。結果は「弱いつながり」を沢山持った研究員の方が、限られた「強いつながり」を持った研究員より、よりクリエイティブな成果を多く残していることが明らかになりました。「弱いつながり」は信頼関係に基づいた安心感や満足感は得られないものの、普段、日常的に接する仲間たちと違う様々な視点を得ることによって、新たな視点で物事を考えることができ、よりクリエイティブな成果を見出す可能性があると言えます。
教員リレーコラム