杉山 成司[理学療法学専攻]
朝起きるのが辛い、午前中頭痛があって気分がすぐれず疲れやすい。それが、午後になると改善し元気になる。こういった中高生のお子さんをお持ちの方は案外多いのではありませんか。試験前にみられる、あるいはたまにしか起こらないようなら、それほど問題はなく経過をみればいいと思います。しかし、これが回数が増えて徐々に重症化し、遅刻日数が多くなって学校に行きづらくなる、そして不登校、引きこもりなど学校生活に支障をきたすようなら無視はできず、今回ご紹介する起立性調節障害という疾病を考慮する必要があります。 起立性調節障害(OD)とは、急激な成長時期に自律神経系の調節がうまく働かないことで起こり、小学校高学年から高校生が好発年齢、女児に多くみられます。学校の始業時期などと関連して5月、9月に顕在化する例もあります。 自律神経系の調節。これはいま、横になった姿勢から起き上がった場合、血液は重力の影響を受けて下肢へ流れ、脳への血流量は不足します。その結果、立ちくらみやめまい、だるい、吐き気といったいわゆる脳貧血症状がでます。普通はここで自律神経系が作動して血管を収縮させるなど、脳の血流不足を防ぐよう働くわけですが、ODでは調節機能が不十分なため前述のような症状を呈します。全身状態は悪くなく、午後には回復し、夜は元気で動き回り、就寝時間は遅くなります。ですから、一見成長期のわがまま、サボリなどと早合点されてしまう危険性もあります。しかし、本人の意志ではどうにもできない「起きようにも起きられない」「動きたくても動けない」状態であり、これを放置すると、二次的に精神的、社会的な問題が生じてより複雑化、長期化することにもつながります。 ODそれ自体は思春期を過ぎれば軽快してくる予後良好な疾患と考えられています。治療も、効果的な生活指導や乾布や冷水による自律神経系の鍛錬療法、自律神経調節のための薬物など、種々の療法が以前から試みられています。一方で、不登校児の半数近くに併存するとも言われるOD。「朝起き」が気になるようでしたら、一度医療機関へご相談されることをお勧めします。
教員リレーコラム