愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

「感染に対する医療職としての心構え」

髙田 政夫 [作業療法学専攻]

 新型コロナウイルスのパンデミック宣言が出されました。日本でもオーバーシュートの可能性が取りざたされています。リハビリテーションでも医療職として感染について何が出来るか試されているのかもしれません。
 作業療法士はよく他の医療職に言われることがあります。私の勤務した病院ではよく看護師に言われたものです『患者さんに甘すぎます。潔・不潔をしっかりわきまえてください』。救急外来のある総合病院や、回復期病棟やがん病棟などでの作業療法は当然のことながら汚染や感染は避けることが第一となります。
 短大卒業生の就職先は多くが病院医療職です。病院で求められるのは医学モデルによる作業療法です。効率よい回復訓練が重んじられ、作業科学がめざすクライエント中心の社会モデルによる作業療法は非効率的であると捉えられ、病院の環境から勧めることが困難な状況です。クライエントのしたい作業やしなければならない作業の導入にあたっては制限が発生します。
 これから話すのは前任校の総合臨床実習で実際に在った事件です。実習学生が担当したクライエントは高齢の車いすに乗った右片麻痺で脳血管性認知症の方でした。屈曲位に固まった手を誰にも触れさせず訓練を拒否し続けた方だったのです。実習生はこの方を喜ばそうと訓練室に園芸店で購入した土と花を用意し、クライエントを病棟へ迎えに行ったのです。この間に、訓練室の土と花をリハ課長が屋外に廃棄したというのです。もちろん学生はクライエントにCOPMを実施し、臨床実習指導者に報連相を欠かさなかったとのことですが。
 この事件には後日談があって、何事にも訓練を拒否していたクライエントは鉢植えの花に手を伸ばしたとのことです。ずっこけ姿勢から上体を少し変え、花に手を伸ばし花の手入れと水やりをしたのです。この方を動かすのに手を焼いていたスッタフ一同驚いたとのこと、人の心の大切さを、花に反応する心をつかむことの大切さを改めて考えさせられたとのことでした。
 日常生活活動や様々な作業環境をクライエントに提供する作業療法士は感染源になってはならないし感染を食い止めねばなりません。医療職としての心構えは大切です。作業を実施する環境をととのえることと感染防止は作業療法士の永遠の課題ともいえます。

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