教員リレーコラム
OT学生の進路希望に応えたい -米国作業療法士の2割は"学校"所属-
髙田 政夫 [作業療法学専攻]
先週末、今年度の卒業見込み者を対象とした就職説明会が開催された。作業療法士への求人は引く手あまたである。今年も学生数を数倍上回る求人がある。しかし、残念なことに、発達障がい分野施設からの求人はなかった。少子高齢化や自治体予算の削減のあおりを受け、対象の小児施設では、定員を増設せず退職者が出て空きがない限り求人がないのである。
『発達障がい分野へ就職を希望したいが現状はどうか』発達障がい講座担当の私のもとへ学生が相談に来る。今年も、すでに二名の相談者があった。そもそも、入学当初から発達障がい分野の就職希望者は多い。作業療法学専攻学生には女子が多いこと、子ども相手の職業の明るいイメージが背景にあると考えられる。しかし、我が短大の教育カリキュラムの内容を見ると、残念なことに臨床実習先として発達障がい分野を経験できる施設は極めて少ない。
このようなハンディを乗り越えてこの分野に就職を希望する学生は極めて優秀である。学生に会ってみると明るく素直で、何より子供が好きな様子がうかがえる。この分野に就職した場合、きっと子どもの立場に立って考えられる優秀な発達障がい作業療法士になることが想像できる。残念で仕方がない。
こんな学生には、平成24年の児童福祉法の改正から、次々に新たな障がい児を取り巻く情勢は変化していること、更には、先進諸外国の状況、先輩作業療法士の貢献が雇用実態を変化させていること(先進病院での発達部門診療の開設、放課後デイサービス加算、学童保育の現状、フリーランス地域・訪問作業療法士の活躍等など)を伝えている。そして最後に『夢を捨てるな、捨てずに育てよう。きっといつか叶うことがある』と必ず付け加える。
若者にはやりたいことを目指し、やり遂げることが何よりも成長につながる。
このことを見てきた私にとって、若い作業療法士の地道な努力を徒労に終わらせない活動は何か。米国作業療法士の2割は学校に所属すると云う。そこまで望まないにしても、少しでも前進させるにはどのようにすべきか悩む日々が当分続く。