愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

草取りから思う

石黒 茂 [作業療法学専攻]

連休が過ぎ、妻がワラビを採りに出かけた。この時期はワラビだけでなく、タラの芽をはじめ様々な山菜が採れ、山菜好きの私にとってはうれしい季節だ。帰宅した妻によれば、今年は草が伸びるのが速く、草に隠れたワラビを見つけるのに苦労するとのことであった。そんな話を聞き、今頃、空き家になっている高山の妻の実家では、庭中草が生い茂っていることだろうと心配になってきた。庭の雑草も除草剤を撒けばそんなに苦労せずにすむと思うが、自然を乱さない、虫も鳥も草木もみんな生きものという妻のこだわりがあり、そうさせてはもらえない。草取りの苦労を思うと気は重いが、放っていくわけにはいかず、早速出かけることにした。
現地に行くと、予想していたよりも庭の草は少なく、ほっとしたものの、時間を惜しんで草取りに精を出した。長年庭の草を取っていると、生えてくる草の種類が年々変わっていくことに気付く。よくもこんなにいろいろな種類の植物が入れ替わり生えてくるものだと感心もする。
 ふと、草の中の白いものが目に入った。よく見るとウスバシロチョウだ。この時期にしかお目に掛かれない、私の好きな蝶である。風がなければフワフワ舞うように飛ぶが、強い風を避けているのか、懸命に草の茎にしがみついて離れない。羽化したばかりで鱗粉もとれておらず、まだ綺麗なままの蝶を見ていると、疲れも吹き飛んでいくような気がした。
草取りに区切りをつけ、帰りに当地のスーパーマーケットに入ると、なんと朴葉ずし用の朴葉が売られているではないか。以前このリレーコラムにも書いたが、3年前はマイマイガの所為で朴の葉が大被害に遭い、朴葉ずしが作れず大変な騒ぎになっていた。住民の協力でマイマイガの幼虫の大発生も押さえることができ、朴の葉も次の年からは心配されていたような大被害から免れたことに、その時気が付いた。
  虫も草も木も、人為的な圧力や環境の様々な変化によって増えたり減ったりしながらも、また、ちゃんと元の状態に戻って生息していく。それは環境に復元力が備わっているからだ。まだまだ日本には、そんな豊かな自然が残された地方があることに安心するとともに、自然の偉大な力に感謝せずにはいられなかった。この地方では、今でも空からの薬剤散布が行われているようだが、少しでも豊かな自然に負荷を欠けぬよう、時間と労力はいるけれど、庭に除草剤を使うのは我慢することにした。

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