教員リレーコラム
追い出しているのは誰だろう?
堀部 恭代 [作業療法学専攻]
私たちは色んな人との関わりの中で、様々な役割を担い、
喜怒哀楽を味わい、様々な経験をしながら成長している。
言い換えれば、私たちの成長に、社会の中で様々な経験を
積むことは欠かせない。
ひとが"社会"で暮らすことは権利だと思う。
しかし、今の"社会"は誰にとっても暮らしやすいのだろうか。
"健常"で"財力"をもつ者にとって都合の良い社会...
私にはそのようにみえる。
"障がい者"や"貧乏人"は"社会"の隅に追いやられる。
ある本※に、町に住みつくホームレスを減らすために、
町中のベンチを撤去した結果、ホームレスだけでなく、
ベンチでの休憩を必要とする、体力の無い子供や高齢者、
妊婦、怪我をした人にとっても住みにくい町になって
しまったことが書かれていた。
そうした"弱者"を追い出す"社会"は脆く衰退するだろう。
「障がいは社会がつくる」と私は思う。
私は作業療法士として病院で対象者と関わってきた。
手が動くよう、歩けるように、
身の回りのことが自分でできるようにと。
しかし、それは、手が動くように、歩けるように、
身の回りのことが自分でできるようにならなければ、
社会に出るなというメッセージになっていなかっただろうか。
生きにくいこころやからだであっても、生きて行けるように
社会に働きかけることも、作業療法士の大きな役割だと思う。
ひとは社会で暮らしながら、様々な経験を重ねながら成長する。
その機会を奪ってはならない。
作業療法士は生きにくさを抱えたひとが社会で共に
暮らせるように応援する応援者であると思う。
支援する側、される側と社会を分けるのではなく
共に歩む存在でありたいと強く思う。
そんな考えを愛知に広めるために、12月3・4日に
「社会の課題を作業のレンズで捉える」をテーマに
セミナーを開催する。初めての実行委員長。
私に能力が無くても、私には多くの応援者がいる。
良いセミナーになると確信している。
セミナーまで後少し。楽しみながら務めたい。
※阿部彩.弱者の居場所がない社会 貧困・格差と社会的包摂,講談社現代新書