愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

地球温暖化とノー・カ・デー

石黒 茂 [作業療法学専攻]

9月末、高山市の外れにある家の庭をツマグロヒョウモンが飛び回っていた。ヒョウモンチョウの仲間は、どれも翅の表側が黄褐色に黒の豹柄であり、見た目はよく似ている。しかし、ツマグロヒョウモンは後翅の縁が黒色で、特に雌は前翅の先端部が黒っぽく、そこに白い帯が入っているので、見分けがつきやすい。名古屋や清洲ではよく見かけるが、高山の家の付近では見た覚えがない。こんな所にもいたのかと驚いた。
ツマグロヒョウモンはもともと南方系のチョウで、私が大学生の頃(1970年代)、このチョウは名古屋にいなかった。四国でツマグロヒョウモンを採集して、大喜びした記憶がある。それが、1980年代からどんどん北上し、東海・北陸から関東南部の平野に広がり、今では関東地方北部でも普通に見られるようになってきた。
今までそんなもの欲しいとも思わなかったが、今年、高山の家に扇風機(クーラーではない)をはじめて買った。それだけ夏の暑さが厳しくなってきている。最近は、台風のできかたや大きさ、進路も変である。やはり地球の温暖化が進んでいる所為なのだろうか。ツマグロヒョウモンの場合、食草などとの関わりがあるので単純ではなさそうだが、地球の温暖化が、このチョウやクマゼミなどの南方系昆虫の北上を後押ししていると言われている。そして、南方系の昆虫と言えば、デング熱を媒介するヒトスジシマカもそうだ。今のところ、高山の家の周りに蚊はいない。蚊がいるのはもう少し標高が低いところまでだ。蚊に刺されやすい私にはありがたい。しかし、この調子で温暖化が進むと、いつまでこの平穏が続くのかと心配になる。
報道に寄れば、地球温暖化対策に関するパリ協定がまもなく発効されることになりそうだ。これは、米国、中国、インド、そしてEUが次々とパリ協定に批准したことによる。京都議定書の時に懲りた日本は、「羮に懲りて膾を吹く」の諺どおりの対応であったが、遅まきながら、今国会で慌てて動き出した。こういった交渉ごとは、国と国との利害がぶつかり、難しい。交渉下手の日本は、また、やられてしまった感が残るようなことになるかもしれない(なりそうだ)。しかし、全世界が勇気を持って一歩でも踏み出だそうとしたことである。私の妻は、50年後、日本は亜熱帯だと騒いでいる。ここでの温暖化対策が少しでも功を奏し、高山の家の庭は、今後も「No 蚊 Day」であってほしいと願うばかりである。

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