教員リレーコラム
「今年の木工作業を終えて」
横山 剛 [作業療法学専攻]
今年も基礎作業学実習の木工作業を終えました。夏休み前に第1回目の講義でしたから期間として4か月くらいで実施しました。今年実習の所感を交えてこの授業にこめた思いを述べていきたいと思います。ほとんどの学生は木工の作業を中学生時代に経験したことがあるようです。しかしながら、道具の使い方や材料の性質、作業の特徴といったことまでは学んではいないようです。このような作業を「治療」として用いるためには、学びが必要です。
木工は日本人に馴染みのある木材を使用しての作業です。また先にも述べましたが比較的馴染みのある作業でもあります。ただ木工の専門家になるために学んだのではない限り道具や材料の性質等について多くの場合知りません。ご存じのように木材は堅い素材であり(可塑性に乏しい)、設計図を元に各種道具を用いて加工していく作業(構成的な作業)です。つまりこれらのことから分かることは、作業を失敗したときに「修正が困難である」ということであります。馴染みはあってもやり慣れていない作業ですから、思ったように作業が進まないとき、失敗しやすい作業であり、修正が必要となりやすい作業であるということになります。今年も多くの学生たちが思ったようにはいかない、といった体験をし、様々な葛藤を抱えながらも作業を遂行し終えたことは大いに賞賛に値することだと思います。
話は変わります。人は「人生」という最大級の作業を行なっていると考えますが、様々な困難に遭遇することは予測に難いどころかいつものことのように思えます。いつ何時に何々が起こる、と分かっていれば何の苦労もないのかもしれません。逆に様々なことの計画を立案しても必ずしもそのようになるとも限りません。つまり人生を送っていくことに際して、この先何が起こるのか、いつ失敗するかなど分からないことばかりであることが前提であります。そうしてみますと先人たちは、おそらくは明日のことがどうなるかですら分からない状況であってもあの手この手を駆使し、また他人の援助を求め・求められながら力強く生きてきたのに違いありません。
これから社会人として世の中に出ていく学生たちが、力強く人生を歩めるようにとこの授業のみならずこれからも応援し続けています。