教員リレーコラム
作業療法がめざすもの~Occupationally Just World~
堀部 恭代 [作業療法学専攻]
『作業療法とはなにか』...なかなか難しい問いであり,作業療法士によって様々な答えが返ってくるかもしれない.私も日々,論文を読んだり,知人や学生とのディスカッションをしながらあれこれと考えている.これが私の楽しい作業だ.
最近,「作業的に丁度いい世界=occupationally just world」の実現が作業療法の追い求める姿ではないかと主張する論文に出会った※1.
自分がやりたいと思うことを,丁度良い量だけ自分で選び,主導権をもって取り組む.その中で,自分らしさを感じ,心や身体が健康になり,ひとや社会との繋がりがうまれ,ひととして成長できる.そんなことが誰でも当たり前にできる世界を「作業的に丁度いい世界」と言うようだ.そう考えると,作業療法の対象者は「障害の有無」ではなく,「作業的に不都合のあるひと」なのだろう.
例えば...
ひとと関わることが苦手なために自分でやりたい仕事を選べないひと
からが動かないことで車の運転を禁止されお気に入りの店に買い物にいけないひと
仕事の量が多すぎて子どもと楽しく過ごす時間がもてないひと
特にやりたいことが見つからず面白くもないテレビをひたすら眺めるひと
作業療法士が医療保険・介護保険分野に限らず,様々な分野で活躍できる可能性が出てくる.作業療法とはなにか...追求すればするほど,作業療法の可能性を知ることができる.
「作業的に丁度いい世界」とはどのようなことなのか,また,どのように実践していくのか...また,一つあれこれ考える材料が増え,わくわくする.
※吉川ひろみ:Occupational Therapy's Social Vision:OTジャーナル,37(3):239-242,2003