教員リレーコラム
続・学習帳と虫嫌い
石黒 茂 [作業療法学専攻]
先回のリレーコラムに「学習帳と虫嫌い」と題して、ショウワノートのジャポニカ学習帳の表紙から昆虫写真が消えたことを書いた。この学習帳の表紙から昆虫写真が外されたことには、さすがに各方面からの反響が大きかったらしい。
そこで、ショウワノートはアマゾンと共同してジャポニカ学習帳の表紙の人気投票を行うことにした。その結果は「上位のほとんどを昆虫写真が占め、選ばれた表紙はアマゾンで限定販売される予定で、一般向けについても復活を検討している。」(平成27年7月7日のYaHoo!ニュース)とのことだった。今後の検討が必要であろうが、復活する方向に向かっているのは大変喜ばしいことだ。
本年9月27日の日本経済新聞の文化欄に、学習帳の表紙を取り続けてこられた山口進氏の寄稿「学習帳 好奇心の花咲かす」が載せられていた。
「虫なしで、花だけで多くの写真を撮影するのは難しい。蜜を求めて、花のいる場所には虫が来る。花と昆虫の撮影は切っても切り離せないものだ。」「虫が本当に苦手な人がいるのは理解している。だが、そういう人が一部いるからといって、すべての子どもが昆虫に触れる機会をなくしてしまうのはどうだろうか。・・・・多くの子どもは本能的に虫に好奇心を抱くのではないか。」正にそのとおりだ。ある意味、当たり前のことであるが、何十年と写真を撮り続けた人の言葉には重みがある。
その記事の中にこんな一文があった。「世界中で開発が進み、・・・・現在は撮影が格段に難しくなった。・・・・世界中で外来種が幅を利かせ、その土地の花を見つけるのも一苦労だ。」地球上から本来の自然の姿がどんどん失われ、その土地本来の虫や花が、当たり前にそこで見られなくなることは悲しいものだ。
今、生物多様性の重要性が世界中で叫ばれている。なぜ外来種を駆除しなければ行けないのか、なぜ在来種の保護が必要なのか。いろいろな人がいろいろな理屈で説明するが、何となく心に響かないことが多い。そんなことに難しい説明がいらず、心配もなく学習帳の表紙に昆虫写真が飾られる世界になってほしいと、山口氏の文章を読み改めてそう思った。