愛知医療学院短期大学

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教員リレーコラム

放浪という歌

舟橋 啓臣 [理学療法学専攻]

 もう50年近く前に覚え、歌詞が深く心に沁み入ったためか、ずっと忘れられない一曲。当時のシングルレコード盤のB面に入っていたのだが、A面は確か「東京流れ者」だったように思う。「流れ流れて東京を~」という歌は当時の世相(軟派がはやり始めた頃で、硬派を懐かしむ風潮が芽生えてきていた)を反映してかなり流行した。自分はむしろB面の「放浪」が大好きになった。歌手は竹越ひろ子、作曲はいわゆる読み人知らずで不詳となっており、どこかの大学の寮歌のようだという説明書きがあったように記憶している。「月は東に夕日は西に」から始まる。
 当時、自分が青春時代だった頃は、義理・人情という言葉がもてはやされたりしていた中で、いっぱしに悪ぶったりしていたこともあり、この歌詞の中の荒野を一人とぼとぼと歩く姿を思い浮かべ、自分に照らし合わせてみると、何と寂しげでカッコよく映ったことか。青春とはそんなものである。カラオケに行ってもこんな曲があるはずもないし、ずっと歌わないこの歌詞をこれまで何十年も忘れないできた。ほろ苦い青春へのレクイエムか。とはいえ、こうした一曲を持っている人は少なくないのではないだろうか。
 歌というものは、その時々の出来事や心の変化などに連れて、口ずさんだり聞き入ったりして心に残っているものだと、つくづく思い知らされる。この放浪という一曲は墓場までの道連れとなるだろう。

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