教員リレーコラム

「赤ちゃんの成長を見守る身体測定」

杉山 成司[理学療法学専攻]

突然ですが皆さん、お子さんが生まれたときの体重、身長、頭囲を覚えていますか? この質問に大抵のお母さんは体重の下1ケタまで正確にお答えになります。では、身長はどうでしょう? 回答率は下がりますが、かなりの方が答えてくれます。それでは、頭囲は? 返答できる方は極端に少なくなってきます。 確かに、子どもの成長をみるのに体重が重要であることは間違いありません。しかし体重だけでなく、身長や頭囲など身体の他の部分とのバランスを知ることは、発育上の問題点を少しでも見逃さない上手な方法といえます。 最近のデータでは、満期出産の赤ちゃんの場合、平均体重は3000g前後です。昭和時代の3200~3300gだったのと比べるとやや減少傾向にあります。身長は50cmと覚えやすい数字です。さて頭囲、33cm前後です。 次に満1歳までの成長を見てみましょう。まず体重ですが、生後3~4ヶ月で出生時の2倍、1歳で3倍(9kg前後)になります。身長は1歳で1.5倍(75cm前後)、頭囲も大雑把に1.5倍(45~46cm)です。このように乳児の成長スピードはとても速く、単純にみても、体重は月に500g、身長は2cm、頭囲は1cm増えて行く計算です。お子さんが生まれて最初の何カ月間はあっという間に過ぎてしまいますが、その2,3ヶ月間で身長は5~6cm伸び、頭囲も数cm増えています。発育状態を気にして体重を測る機会は多いと思いますが、こういった計測値も大いに活用し、その後どのように、どれくらい増えて行くか、全体を総合的に見守って行くことが大切です。 発育に関してお母さん方からよく受ける質問の中に「最近、体重が余り増えないのですが」というのがあります。そこで体重の数値を見せてもらう訳ですが、1回だけの計測結果では判断できないのが普通で、身長も同時に計測しながら継続的に何回か記録をとり経過を追います。そうすると、発育の方向性がみえてきます。 例えば元気なお子さんで、体重の増えは横ばいで身長は想定通り順調に伸びているなら、多くは経過観察で済みます。これが、体重と同時に身長の伸びも悪いときは、軽視できない重大な病気が潜んでいる可能性があります。横ばいでなく減少する体重も要注意です。頭囲の成長については、増加でも減少でも予想を外れる動きが見られるなら医師にご相談ください。乳幼児の発育には栄養状態が大きく影響しますが、生活環境やホルモン、ストレス、そして個人差など多くの要因が関与しており、全体像を詳しく診る必要があります。 体重や身長、頭囲の測定は簡便で安上がり、しかも発育全般に関する有意義な情報を与えてくれる。頼もしいですね。
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